1986年、小学校高学年以上を対象にしたラジコンブームを受けて新しいキッズホビーブームが産声を上げました。それが「ミニ四駆」です。「ラジコンのように操縦できないミニ四駆はすぐに廃れる」という声をよそに、ミニ四駆市場は急成長を遂げ10年以上もの間小学生のホビーの王様として君臨しました。そんなミニ四駆について語っていきます!
ミニ四駆とは、模型メーカーのタミヤが発表した1/32スケールの車の模型です。しかし、モーターライズ(電池式モーターを動力に組み込んだ模型)をお家芸とするタミヤは、ミニ四駆を「ラジコンへの入り口」という位置づけにして、「単三電池2本で走る模型」として発売しました。これが大変な人気を呼び、小学館の学童向け雑誌や「コロコロコミック」などでミニ四駆を主軸にした漫画が多数連載されました。
ミニ四駆の魅力は、「速い」「カッコいい」「改造の楽しみ」「友達と競い合う」などが上げられます。
ミニ四駆は「実車のサイズに直すとF1並みの速さになる」と言うだけあって、そのスピードは自転車でも追いつきにくいほどでした。おそらく、子供が触れるおもちゃの中でも最速を誇っていたことは疑いようもありません。当時は、F1ブームによってレーシングカーへの興味が強まっていた時期だったこともミニ四駆にとっては強みだったと言えるでしょう。
ミニ四駆は、タミヤが発売していたラジコンをモデルにした機種が多く発売されていました。これによって、『実車には出来ないデザインができる』というラジコンの利点を引き継ぎ、様々なデザインのミニ四駆が発売されています。ミニ四駆のボディは空気の抵抗を考えた設計になっているのでシャープなデザインが多く、「速く走る車としてのカッコよさ」を追求できたのも魅力を支える一助となったのです。
ミニ四駆は、ラジコンの「速くするための改造」とプラモデルの「カッコよくする改造」を併せ持ったホビーと言えます。当時連載されていたミニ四駆漫画に登場するミニ四駆に近づけるために、自分をイメージした理想に近づけるために、とにかく速く走るために、とさまざまなコンセプトで改造されたミニ四駆は、いわば花形と言えました。
ミニ四駆は、タミヤがもっとも大々的にレースを主催した製品と言われています。小学館との共催による「ジャパンカップ」は、全国での予選大会を勝ち抜いてきた強豪同士が熱いレースを繰り広げるというミニ四駆最大のお祭りでした。緻密に設定されたレギュレーション(規約)の中で、切磋琢磨した選手たちの努力の結晶であるミニ四駆が競い合うというジャパンカップは名実ともにキッズホビーの頂点と言えるでしょう。
2006年現在、新たなミニ四駆ブームが巻き起こるといわれています。これまでに起こったミニ四駆ブームは、二回あります。
ミニ四駆のブームは、小学館の「コロコロコミック」に支えられていたといっても過言では無いでしょう。コロコロコミックはラジコンブーム・プラモブームで蓄積したノウハウを元に、1987年から「ダッシュ!四駆郎」を連載します。これによって認知度と友達とのレースの広がりが生まれました。また、ミニ四駆の改造やメンテナンスの技術を教える「GO!GO!ミニ四ファイター」も続けて連載開始し、第一次ミニ四駆ブームが巻き起こったのです。しかし、「ダッシュ!四駆郎」の連載終了とともに、第一次ミニ四駆ブームも終焉を迎えたのです。
それでも、タミヤとコロコロコミックはミニ四駆のサポートを打ち切ることなく継続していきました。その活動が実を結んだのが「フルカウルミニ四駆」の発表と、それに連動した漫画「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」の人気が爆発したことによる第二次ミニ四駆ブームです。「レッツ&ゴー」は3年に渡ってアニメが放映されると言う人気の高さを誇り、メインターゲット層の小学生だけでなく、第一次ミニ四駆ブームに参加していた中高生をも取り込んだのでした。
そして、2005年から「ミニ四駆PRO」が発売され第三次ミニ四駆ブームが到来するのではないかという声が高まってきています。「ミニ四駆PRO」は、今までの組み立てキットと平行して完成品を同時発売するという手法で商品展開がなされています。また、昨今のオンラインゲームブームに連動した「ミニ四駆GPX」、「ミニ四駆オンラインレーサー」を発表し、第一次・第二次ミニ四駆ブームに参加した層へのアピールを行っています。
今の二十代の男性のほとんどは、ミニ四駆ブームを体験しているといっても過言では無いでしょう。歴史的な事実は横に除けて、「あるある」というエピソードなどを語っていきます。
ミニ四駆の改造における知識の大半は、前述のミニ四ファイターの漫画から仕入れたものであると言っても過言では無いでしょう。その中でも、実践者が多かったのはこのモーターの慣らし運転ではないでしょうか。シャーシを台に置くなどして走り出さないようにした後、使い古しで残量の少ない電池でモーターを慣らし運転することでモーターの性能をフルに引き出し、グリースを塗ったギアを馴染ませるのです。「新品の電池の方が効果がある」とばかりに試して親に怒られたり、慣らし運転のしすぎでモーターがダメになったりした人も多いのでは無いでしょうか。
同じくミニ四ファイターの漫画ではミニ四駆の軽量化に血道をあげる描写が多かったと記憶しています。シャーシの軽量化のしすぎで強度が落ちてコーナーを曲り切れず大破したとか、空中分解したという人も多いのではないでしょうか? 後にシャーシやボディに付けるセッティングウェイトが発売されたことで、「漫画の内容は真実ではない」と悟った人も少なからずいることでしょう。
「ダッシュ!四駆郎」では、ミニ四駆に標準で付いてくるスパイクタイヤをひっくり返すとスリックタイヤ(表面が滑らかなタイヤ)に変形するミニ四駆を操るキャラが登場しました。他にもスパイクをニッパーで切ってスリックタイヤにしたり、オプションパーツのスポンジタイヤの表面を紙やすりで削ったり、溝を入れてグリップ力を強めるといった改造がコロコロ誌面で紹介されていました。しかし、改造しすぎて薄くなってしまったり、スパイクタイヤをひっくり返してもスリックタイヤとしては使えなかったりとフィクションと現実の差を、そして自分の技術力のなさを知った人も多いと思います。
ミニ四駆は初期に「ドレスアップパーツ」と銘打った外見を変えるためのパーツが様々に発売されていました。その中でも「ウィング・ダクトセット」「ウィング・ターボセット」は微妙に使いどころの悪いパーツでした。ミニ四ファイター漫画ではウィング・ダクトセットは「モーターの空気冷却口にして見た目も速さもドレスアップ!」、ウィング・ターボセットは「ローラーが付いているぞ!」と言う利点が紹介されていました。しかし、空力特性が理解できない小学生にとっては、ウィングパーツほど無駄なものはなかったのです。せいぜい、初期のレーサーミニ四駆のウィングを取り替えるくらいにしか使わなかった記憶があります。また、ボディに搭載する発光ダイオードも発売されていましたが「電池の無駄遣い」として、搭載していた人はあまり居ませんでした。
ミニ四駆の速さを支えるのは、やはりモーターです。「慣らし運転したハイパーミニモーター最強」「ダッシュミニモーター一択」「レブチューンモーターまだー?」といったモーターの選択で友人と論争した人も多いのではないでしょうか。公式レギュレーションでは「ハイパーミニモーターのみ」というルールが長らく続いたものの、野試合ではそれこそ多種多様にモーターを選んで使っていたのです。中にはタミヤ純正ではない超高級モーターを搭載して、ミニ四駆を炎上させたことのある人もいることでしょう。
日本では、おもちゃでブームが起きると半ば自動的に類似商品が出回るようになっています。現在「爆SEED」を展開しているバンダイや、アオシマ、MARUIといったそうそうたるプラモデル・ラジコンメーカーがこぞってミニ四駆業界に参戦したのでした。しかし、モーターは共用できてもその他のパーツが共用できなかったり、そもそも本家本元のタミヤのレースには参戦できなかったりとミニ四駆の類似商品は、ミニ四駆のシェアに食い込むことなく『クリスマスや誕生日プレゼントなどで、見分けがつかないお父さん方によって買い求められ、家で子供が泣く』という結果に終わってしまいました。
「どうしても速く走らせたい!」という思いから、ありえない改造に走った人たちも多かったのではないでしょうか。例えば、シャーシを金属製にしたりモーターの内部の導線の巻きを増やしたり、単5電池4本使用マシンに改造したりラジコン化したりといった、ありえないくらいの魔改造に手を染めていった人も中にはいるのです。特に、モーターの導線改造は外見だけはレギュレーションに違反しないのでチャレンジした人も多かったようです。
ミニ四駆から私たちは多くのことを学びました。「大人はウソツキだ!」とか「手段を選ばないと大変な結果を招く」とか、「親に大事な買い物を任せてはいけない」とか。ミニ四駆は空前の大ブームのなかで、子供たちに大事なことを教えてくれた生きた教科書だったのです。今一度、無茶な改造や無茶な走行でダメにしてしまったミニ四駆に思いを馳せてみませんか?
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