SF小説

20世紀において、人々の想像力はまだ見ぬ未来に向かって大きく羽ばたいていました。その想像力の発露こそがSFだったのです。漫画やアニメなどのメディア媒体が発達していなかった時代において、その想像力を掻き立てる手助けをしていたのがSF小説です。現在では「我こそはSF小説なり!」と主張する作品が少なくなっていますが、SF小説を取り巻いた状況や歴史を遡って見ましょう。

SF小説とは

SF小説とはサイエンス・フィクション(Science Fiction)の略で、「高度に発達した科学技術の元にある世界を想像した虚構」のことを指します。SFとして定義される条件は、「作品が執筆された時代では再現できない技術が物語の中で使われている」ことであるようです。しかし、「2001年宇宙の旅」で知られるアーサー・C・クラークは『高度に発達した科学はもはや魔法と区別できない』と説いていることもあり、いわゆるファンタジー小説もSF小説の範疇に含むという考え方もあるようです。

SF小説の原点とは?

文学史において、SF小説の先駆けとなったのは「月世界旅行」「海底二万マイル」のジュール・ヴェルヌと「透明人間」「宇宙戦争」「タイム・マシン」などのH・G・ウェルズであると言われています。しかし、ホラー小説として名高いメアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」こそがSF小説の原点であるとも言われています。『雷の電力によって人造人間を起動させる』というくだりは、まさしく当時の科学技術の延長線上にあるアイデアであるからです。

SF小説の名付け親は?

SF小説などのサイエンス・フィクションと言う言葉を作り出したのは、アメリカの小説家で「SF小説の父」と呼び名の高いヒューゴー・ガーンズバックです。ガーンズバックは世界初のSF小説専門誌「アメイジング・ストーリーズ」を1926年に創刊し、SF小説の普及に努めた功労者として知られています。しかし、ガーンズバックは最初から「サイエンス・フィクション」と言う言葉を作ったのではなく「サイエンティフィクション(科学的な虚構)」と言う合成語を作り出し、それがいつしかSFへと変わっていったようです。

日本におけるSF小説

日本でも、1960年代にSF小説の波が起こり様々な作家を輩出していきました。「日本沈没」「さよならジュピター」の小松左京、「日本以外全部沈没」「時をかける少女」の筒井康隆、『ショート・ショート小説の神様』星新一と、日本の大衆文壇に大きな影響を与えた作家のほとんどはSF小説出身者と言っても過言ではないほどの才能を世に送り出しています。しかし、日本のSF小説は1980年代半ばを境に衰退していくことになります。その背景にあるのは、「機動戦士ガンダム」などのアニメブームに日本SF界が拒絶反応を示したことや、ハリウッド製のSF映画や香港アクション映画のブームが人々の嗜好を塗り替えてしまったことにあると言われています。

SF小説の定義とは?

では、SF小説は一体何を持ってSF小説と定義されるのでしょうか? 定義の一つとされるのが「センス・オブ・ワンダー」であると言われています。直訳すれば「不思議と感じる」のですが、つまり『SF小説とは読者に不思議を感じさせ、それを探求させる原動力となるべきである』と言うことなのです。例えば、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」を見てロボット工学者の道を志した人がいるとします。それはつまり、その人は「ドラえもん」や「鉄腕アトム」にセンス・オブ・ワンダーを感じたと言うことなのです。

SF小説とは結局のところ何なのか?

では、SF小説は結局のところどういうものなのでしょうか。私が思うに『高度な科学技術の産物を物語上の重要な要素として配した小説』です。つまり、タイムスリップやワープ航法といったSF小説の定番は設定であって、主人公や物語のあらすじではないのです。そういったSF小説的要素に捉われた時、SF小説はSF小説でも小説ですらない文章に堕するのです。

SF小説における名作

今や、SF小説は当たり前のジャンルであり「正統派SF小説」だとか「SF小説の決定版」と言った見出しさえつけるのがおこがましいほどに浸透しています。昨今のライトノベルブームにおいても、中心的な作品にはなんらかのSF要素が組み込まれているのが当たり前とも言えるほどなのです。そんな情勢の中でも、「聖典」として読んでおくべき名作は未だ色あせることがありません。そういったSF小説の名作・傑作を紹介します。

「2001年宇宙の旅」(アーサー・C・クラーク)

スタンリー・キューブリック監督によって映画化された、SF小説の名作として名高い作品です。生命の進化を促す石版「モノリス」と人類の再会、人工知能HAL-9000の暴走と言ったSF小説としての模範的な方向性を示した名作です。

「星を継ぐもの」(ジェイムズ・P・ホーガン)

科学技術者でもあったホーガンのデビュー作として知られているSF小説です。月面で発見された宇宙服姿の遺骸は、五万年前の地球人であったことがわかる所から物語は始まります。木星の衛星ガニメデと月と地球を舞台にした、人類の原点にまつわる謎を解き明かすサスペンスとしても完成度の高い傑作です。

「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン)

「宇宙の戦士」「月は無慈悲な夜の女王」などで知られるハインラインの代表作の一つです。タイトルの「夏への扉」は、主人公のダンが飼っている猫のピートが冬になる度に探す、「夏へと通じているドア」のことです。メイドロボを先取りした「ハイヤード・ガール」や冷凍睡眠やタイム・マシンと、SF小説の小道具として馴染みの深いものを配置しながら、物語性の高い作品に仕上がっているのが特徴です。

「ペリー・ローダンシリーズ」(K・H・シェールほか)

1961年の第一巻刊行以来45年に渡って展開され続ける地球を飛び出し、遥かな宇宙を舞台にしたスペース・オペラの名作です。既に本編・外伝含めて3000冊ほどが刊行されている世界的にも最長と考えられる一大叙事詩です。日本語版は330冊ほど出ていますが追いつけるのかどうかさえ怪しい、SF小説ひいては小説界の怪作です。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(フィリップ・K・ディック)

映画「ブレードランナー」の原作として知られるSF小説の名作です。人類の姿を模したアンドロイド「レプリカント」の脱走を止めるために賞金稼ぎのデッカードがレプリカントたちを追いかけると言う物語ですが、卓越した心理描写やユニコーンの夢の暗示、想像しなかった未来の姿を巧みに描いた作品として今もファンが絶えない作品です。

「ニューロマンサー」(ウィリアム・ギブスン)

「サイバーパンク」というSF小説の新ジャンルを開拓したギブスンの代表作です。肉体の一部を電脳機械に置き換えるサイバネティクス、広大な電脳空間サイバースペースへの潜入と言ったコンピューターと共にある人類と社会の姿を描いた名作です。映画「マトリックス」「攻殻機動隊」などに多大な影響を与えた作品として知られています。

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